コース概要
臨床統計学とは
臨床統計学(Clinical Biostatistics)は、臨床試験でどのようにデータを集めるか(研究計画)、どのように解析するか(統計解析)といった方法論を提供する科学です。アカデミアや製薬メーカーは医薬品など様々な医療技術を開発していますが、実用化するためには人を対象とした臨床試験を行い、有効性・安全性を評価する必要があります。科学的に厳密な評価を行うために統計学が活用され、臨床試験と数理の両方に強い臨床統計家の参画が不可欠です。日本の臨床統計家の多くは、日本計量生物学会に所属しています。
臨床統計家の仕事は、臨床試験の実務と臨床試験方法論の研究とに大きく分かれます。臨床試験の実務では、試験実施計画書(プロトコール)の作成、中間解析、統計解析(プログラミング・報告書作成)、データの解釈を行います。これらは医師との共同作業で行われるため、医療一般に関する知識とコミュニケーション能力が求められます。方法論の研究では、数学的な証明・導出、コンピューターシミュレーション、実データへの適用を通じて新しい統計手法を開発し、その性能を評価します。
臨床統計家育成コース
本コースは、京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻(SPH)に設置された修士課程に相当する2年制の専門職学位課程です。コース修了後は、社会健康医学修士(専門職)が授与されます。
設立経緯
本コースは、国立研究開発法人日本医療研究開発機構「生物統計家育成支援事業」として実施しています。本事業では、京都大学大学院と東京大学大学院が生物統計家の育成拠点として選ばれました。
公衆衛生大学院(SPH)と社会健康医学修士(MPH)
公衆衛生大学院とは、医療統計学、疫学、環境科学、保健医療管理、行動科学・医療倫理学などの学問を通じて、「個人ではなく社会の中の人間」という視点から医療・健康問題に取り組む人材を育成する大学院です。対象となる学問分野は、自然科学から人文科学にわたっていることから、医学だけでなく、あらゆる分野の出身者を受け入れています。
公衆衛生大学院(School of Public Health; SPH)は、欧米を中心に各国に設置されており、1~2年の専門教育を修めたことを示す国際的に認められた学位として、社会健康医学修士(Master of Public Health; MPH)を授与しています。
キックオフシンポジウム ~コース設立に寄せて~
- データサイエンス教育と臨床統計育成コースへの期待
- 樋口知之(情報・システム研究機構 統計数理研究所)
- 臨床統計学講座・臨床統計家育成コースの概要、現在、未来
- 佐藤俊哉(京都大学医療統計)
- 臨床統計家に臨む資質と教育~データセンターの立場から~
- 福田治彦 (国立がん研究センター中央病院 臨床研究支援部門 データ管理部JCOGデータセンター)
- 臨床統計家に望むこと~医薬品審査の観点から~
- 安藤友紀 (医薬品医療機器総合機構 スペシャリスト 生物統計担当)
- 日本計量生物学会 試験統計家認定制度の概要
- 手良向聡 (京都府立医科大学 日本計量生物学会 試験統計家認定担当理事)

臨床統計シンポジウム ―Estimands and Missing Data in Clinical Trials―
- Estimands, Missing Data, and Sensitivity Analysis
- Geert Molenberghs (Universiteit Hasselt & KU Leuven)
- Recurrent Event Estimands: With or Without Competing Terminal Event
- Jiawei Wei (Novartis)
- Estimands, Sensitivity Analysis and Missing Data
- Ilya Lipkovich (Eli Lilly and Company)
- What is an Appropriate Estimand When There are Incomplete Data? Some Case Studies
- Masataka Taguri (Yokohama City University)
- Discussions
- Hideki Suganami (Kowa)
- Satoru Tsuchiya (Sumitomo Dainippon Pharm)
- Hiroshi Komazaki (Maruho)
- Masaaki Doi (Kyoto University)

