京都大学
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臨床統計家として活躍されている方たち

医療統計学分野で専門職学位課程を修了した方たちから

二村明憲さん

グラクソ・スミスクライン株式会社(2016年に医療統計学分野で専門職学位課程を修了)

現在は製薬企業の統計担当者として、医薬品の承認申請のための臨床試験に携わっております。私は医療統計学分野に入学する前は6年制の薬学部に在籍しており、4回生からは配属された研究室で薬物動態学の研究をしていました。

薬学部卒業後、医療統計を勉強しようとした主なきっかけは2つありました。1つ目は臨床に近い研究室であり、論文紹介の時間でも多くの学生が臨床試験・臨床研究の論文を紹介していたことです。それらの論文には様々な効果指標や信頼区間、変数の調整といった言葉が多く出てきていました。なんとなく意味はわかるものの、どうも腑に落ちていなかったことを覚えています。2つ目は製薬企業に統計解析の仕事があることを知ったことです。私は自分でプログラミングの勉強をしており、仕事として薬学の知識とプログラミングの知識が役に立つようなことがしたいと考えておりました。製薬企業の業務や募集を調べていたところ、統計解析の業務のことを知り、やりがいのある仕事として興味を持ちました。以上2点のきっかけから医療統計に興味を持ち、学部生の時に医療統計の勉強をしていたのですが、体系的に学ぼうと思うのならきちんと指導を受けるべきだと感じ、薬学部を卒業後、医療統計学の道に進みました。

現在の仕事に特に役立っていることとして、医療統計を専門でない方への説明の仕方を学びました。佐藤俊哉先生の講義は専門家でない方にも分かりやすいもので、非常に勉強になりました。また医療統計の実習では実際に専門でない方に説明する機会が多くあり、医療統計を説明できる、とても良い経験でした。臨床試験では統計担当者だけでなく、臨床や薬事といった非常に幅広い専門性を持った方々が関わり、そういった方々に医療統計を説明する機会も多くあります。このように医療統計が専門でない方に、説明することも統計担当者として重要な役割であると思いますし、大きなやりがいにつながる良い機会だと感じます。

玉井 絢子さん

イーピーエス株式会社 CRO事業本部 臨床情報事業部(2013年に医療統計学分野で専門職学位課程を修了)

現在CRO(用語解説1)で統計解析の部署に所属しており、医薬品・医療機器メーカーや医療機関などの試験で統計解析をしています。もう少し具体的な仕事内容としては、解析のための計画書を作成したり、解析結果を帳票にまとめるための仕様書・プログラム作成などをしています。
CROは幅広い試験に携わる事ができるため、好き嫌いは分かれるかもしれませんが、私は面白いと思っています。また、解析は試験の最終段階のため責任も大きいですが、自分が担当した試験結果が良かった時や承認がおりた時は感慨深いです。
大学では生物系の学科にいたため、生物全般の講義を受けたり基礎実験をしていました。4年生の時には植物生理学の研究室で果実の光合成を卒業研究のテーマにしていました(ほとんど光が当たらないのに、豆の中身も光合成しています!)。
大学時代は数学や統計学には全く触れていませんでした。
生物自体は好きでしたが、自分が研究職に向いていないと感じていました。また、企業への就職で、勉強した内容を仕事に繋げられたらいいなぁと考えていたため、違う分野を勉強してみようと決めました。そして、以前から興味のあった製薬業界で働くために何が必要か考えたときに、医療統計学を見つけました。
上記の通り数学や統計学を勉強していなかったため、数式を見る事もしんどかったですが、社会健康医学系専攻で学んだ事は今の仕事に繋がっていると思います。
社会健康医学系専攻では色々な年代や職業の学生が集まっているため、実習や飲み会でお話しを聞けることが楽しく、大いに人生勉強になりました。また、同業の方とは仕事で関わる事もあったり、同級生とは今でも時々食事をしたり、良い出会いがたくさんありました。

最後になりますが、京都楽しいですよ!

用語解説1: 医薬品開発業務受託機関(Contract Research Organization; CRO)
医薬品を開発する際には、臨床試験を行って患者での有効性と安全性を調べることが必要ですが、製薬メーカーといえども次々と新しい医薬品の候補が出てくるわけではありません。そうすると自社内に臨床試験の実施部門を持つよりも、臨床試験を外注することができれば効率よく開発を進めることができます。この臨床試験を支援する会社をCROといいます。

小谷 基さん

小野薬品工業株式会社(2011年に医療統計学分野で専門職学位課程を修了、2014年博士課程修了)

臨床統計家育成コースにご関心をお持ちの皆さま、こんにちは。私は小野薬品工業株式会社という製薬企業で勤務しています、京都大学医療統計学分野OBの小谷基と申します。
私の現在の仕事は臨床試験における統計解析職です。製薬企業における臨床試験の多くは、医薬品として世に出る前に、対象となる疾病の患者さんに参加していただきデータを収集することによって、当該医薬品候補の有効性・安全性を証明するために実施されます。私のような統計解析担当者は、文字通りデータの統計解析を担当することはもちろんですが、質量ともにどのようにデータを収集すればよいのかなど、臨床試験の計画にも深く関与し、今や統計解析担当者の果たす役割は医学領域を専門とする臨床担当者に匹敵するくらい大きくなっています。そのような中で、臨床試験の結果として医薬品を世に送り出すことができたり、どのような評価項目を設定すれば患者さんにとって意味のある評価になるのかを考え抜いたりすることにやりがいを感じています。
私はもともと大学では農学を専攻しており、家畜の遺伝的評価を研究する中で生物統計学を道具として使っていました。製薬企業に入社後、医療統計に関連するさまざまな学会やセミナーに参加していく中で、いかに自分が医療統計の専門家として無知であるかを痛感しましたので、京都大学医療統計学分野の門を叩くことにしました。入学当時は医療統計の専門家になりたいという一心でしたが、社会健康医学系専攻という公衆衛生全般を教育している大学院という環境において、さまざまな領域の疫学や生命倫理学などについて勉強することができ、プロの医療統計家として広い視野を身につけることができました。またこのことは、製薬企業の仕事においても、狭い領域に留まることなくさまざまな領域の担当者と議論するときに役立っており、幅広く楽しく仕事できていることにつながっていると感じています。
肝心の医療統計についても、臨床統計家育成コースが設立されることによって、講義や実習がより充実したものになると聞いています。私のこれまでの経験から考えると、大学卒業後すぐにこのような教育を受けられることはうらやましいとさえ感じます。臨床統計家育成コースを修了された暁には、プロの医療統計家として皆さまにお会いできることを楽しみにしています。

高橋 佳苗さん

大阪市立大学 大学院医学研究科 医療統計学講座(2010年に医療統計学分野で専門職学位課程を修了)

私は2010年に社会健康医学系専攻専門職学位課程を修了しました。卒後は国立病院の臨床研究支援部門に就職し、病院で実施される臨床研究の実施計画書の作成支援や、臨床研究データの解析、論文作成支援などを行いました。現在は大学に所属していますが、大学の附属病院にて実施している臨床研究の支援を変わらず行っています。自分の支援した臨床研究の結果が論文等で発表されることで、患者さんへのよりよい治療に貢献できることに大きなやりがいを感じています。
元々、私は大学の学部課程では看護学を専攻しており、将来的には保健師を目指していました。そんな中、大学の講義で公衆衛生における統計学の重要性を学び、非常に興味を持ちました。そこで、統計学の素養のある保健師になりたいと思い、大学院への進学を決めました。進路としては、紆余曲折があり、現在は統計解析担当者として臨床試験支援業務に携わっていますが、やりがいがあり、今の仕事に就けてよかったと思っています。
大学院では医療統計学だけでなく、社会健康医学に関する幅広い内容について学ぶことができ、現在の仕事に大いに役立っていると感じます。また、大学院生の時には、研究室からご紹介いただいて、国立病院の臨床研究支援部門で半年ほどアルバイトをさせていただきました。臨床研究支援業務について実践的な内容を学ぶことができ、大変有難い経験をさせていただきました。
大学院での2年間はあっという間でしたが、自分の職種もガラッと変わり、人生における一つのターニングポイントだったように思います。元々看護専攻で保健師志望であった私が、いまでは統計解析担当者として、日々医療従事者の方々と一緒に仕事をすることができています。臨床統計家を志して臨床統計家育成コースに進まれる皆さんであれば、必ずや目標を達成できることと思います。

石黒 智恵子さん

独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(2006年に医療統計学分野で専門職学位課程を修了)

私は大学では薬学部に在席し、分子生物学の研究をしていたのですが、人を対象とした研究の方に興味が出てきたので、大学院では医療統計の道に入りました。その後、医薬品医療機器総合機構に就職し、いまは疫学担当として、①医薬品の安全性評価のための各種データベース(ナショナルレセプトデータ、健保レセプトデータ、病院情報データ、等)を用いた薬剤疫学研究の実施、②疫学論文等のレビュー、③新医薬品の承認審査における製造販売後調査計画レビュー、④データベースやレジストリ等を活用した薬剤疫学調査の制度整備や国際基準作り等々、薬事行政上の疫学にまつわる仕事をしています。
日本の薬事行政では、ドラッグラグが解消されて良かった反面、使用実態下での安全性情報が承認時には得られなくなり、市販後の安全性や有用性評価が以前よりも重要になってきています。更に、医療ビッグデータ時代の到来とともに疫学研究に利用可能な各種データベースが普及してきたことを受けて、医薬品の製造販売後の調査(用語解説2)及び試験の実施の基準に関する省令が改定され(2017年10月頃公布予定)、製造販売後調査にもデータベースが利用可能になろうとしています。こういった状況の中、臨床統計家の活躍の幅は、新薬開発のための臨床試験だけでなく、育薬のための “Real world data” を用いた疫学調査へと広がってきており、仕事の責任は重いですが、やりがいを感じています。
大学院で学んだ医療統計の知識や研究経験は、今の仕事に直結しており、今でも講義資料等を見返すことがあります。また、職業柄、幅広い領域の薬を対象とするため、薬の名前だけでおおよそ何の薬か分かるというのは、薬学のバックグラウンドがあるこその強みになっています。ちなみに、プライベートでは二児の母ですが、専門性の高い、やりがいのある仕事が出来ていることは、仕事も家庭も両立しようと思える原動力になっており、臨床統計家は女性の方々にお勧めできる職業だと思います。

用語解説2: 製造販売後調査
医薬品の市販前では、限られた患者集団の限られた人数で臨床試験が実施されて有効性の検証が行われますが、まれな副作用に関する情報が不足しています。このため、医薬品の市販後にも、製薬メーカーは副作用に関する調査をすることが法律で定められています。

嘉田 晃子さん

国立病院機構 名古屋医療センター 臨床研究センター(2002年に医療統計学分野で専門職学位課程を修了)

皆さんは病院で統計をやっていると聞くとどんな仕事を想像しますか。病院には、臨床検査、心電図、脳画像、処方箋情報など多様なデータがあります。それらのデータに、私達は臨床研究を通じて関わっています。 現在、私は国立病院機構名古屋医療センターで臨床研究の計画や解析を行っています。国立病院機構は全国に143の病院があり、約5万5千床の大きな組織です。そこには、がん、血液疾患、成育医療、消化器疾患、神経・筋疾患、重症心身障害児、エイズなど21のグループがあり、研究を進めています。私が関わっている難治性てんかんや小児血液がん等の領域では患者数が少ない中で治療法を開発するため、研究計画や解析に工夫が必要です。
私は理学部数学科の出身で、偏微分方程式を学んでいました。数学を実社会に活かしたいと思い、製薬会社に就職しました。医薬品を世の中に出すためには有効性と安全性を評価する臨床試験が必要で、それらの統計解析を担当しました。担当した医薬品が世の中で使われるようになるのはうれしかったです。
その後、もっと広く人々の健康について考えていきたいと思い、平成12年に社会健康医学系専攻に入学しました。課題研究では欠測というテーマに取り組みました。完全なデータで解析するのが理想ですが、データに欠測がおこった場合に偏りなく結果を評価するための方法を検討しました。今までに実際の臨床研究において多様な欠測に出会ってきており、対応を考え実践しています。また、疫学、倫理、環境衛生、国際保健なども学び、視野が広がったと思います。医療系以外の出身者には生理学、病理学などの医学の科目も必要で、これらは難しかったですが、種々の疾患領域の研究に拒否感なく入っていけるのもそのおかげだと思います。 人々がより良く生きることにつながるような研究や仕事はとても重要と思いますし、その統計解析を担うことにやりがいを感じています。今後は高齢化社会、ゲノム医療、個別化医療、医療機器開発などの変化とともに、チャレンジングな統計的課題が増えます。まだまだ臨床統計家は不足していますので、皆さんも一緒にこれらの課題に取り組みませんか。

代表病院で働く臨床統計家の方たちから

朝倉 こう子さん

国立循環器病研究センター 研究開発基盤センター データサイエンス部 流動研究員

出身学部とこれまでの経歴
大阪大学総合薬学科を卒業後、医師である夫の留学のため一緒に渡米し、帰国後に大阪大学大学院薬学研究科にて修士課程を修了(修士(臨床薬学))しました。その頃、臨床試験に携わっていた夫のすすめで「生物(臨床)統計家」という専門職を知り、医学系研究科医学統計学講座におられた濱﨑先生の指導のもとで、博士課程の学生として勉強と研究を始めました。しばらくの間は、統計的知識のまったくない者が生物統計家を目指すことに戸惑いと不安を感じ、文献を講読したり数式を展開することに相当に苦労しました。しかし、どの疾患や治療法でも臨床試験(研究)の一連の過程において基本となる統計的な考え方は共通であり、生物統計学があらゆる疾患分野においてエビデンスの確立に寄与する点に魅力を感じ、勉強と研究を地道に継続し無事に博士課程を修了(博士(医学))しました。現在は国立循環器病研究センター・データサイエンス部の流動研究員として勤務しています。
現在の仕事の内容
国立循環器病研究センターに所属する研究者が主導する臨床試験(先進医療や医師主導治験を含む)について、臨床統計家として試験のデザインと解析に関する統計支援業務に携わっています。また、一般的な医学・臨床データの統計解析に関するコンサルティングや統計セミナーの講師を通して統計的知識の普及・教育啓発活動に携わっています。これらに加え、実際の業務を通して見えた臨床試験の統計的問題を解決するための方法論の研究と開発を行っています。
育成コース受験者のみなさんへの期待
実際の業務に携わると、現場での問題が動機づけとなって方法論の研究にとり組み、その成果を現場に還元・応用するといった、実務と研究の両立が臨床統計家の理想的な姿であると感じます。本コースでは統計学のバックグラウンドをもたない学生さんでも、講義と研修を通じて臨床統計家の実務と研究に必要な知識や姿勢を体系的に学ぶことができ、修了後は幅広い進路の可能性があります。自分のバックグラウンドを活かす、実務と研究を両立する、出産後も仕事を続けるなど、自分らしさをもつ臨床統計家を目指す方々とお仕事できるのを楽しみにしています。